結論から言えば、相続人が1人でもいるのであれば、遺言書を書いておくべきといえます。
 相続税が発生する場合だけでなく、発生しない場合や、借金の方が多い場合も、遺言書を書いておくのがいいでしょう。
 遺言書を書いておくことのメリットとしては、①万が一自分が死んだとしても、自分の財産(借金も含めて)について、自分がどのように分配したいかという生前の意思を実現することができる②残された家族が自分の財産(借金も含めて)をめぐって争いになることを防ぐことができる③残された家族が遺産分割協議をしなくても済むようになるというメリットがあります。
 ①は、自分の財産(借金も含めて)について、自分の死後も自分の意思を実現することができ、相続人がその意思を汲み取る機会を与えるという点で重要です。
 また、②も、相続トラブルの防止という点で重要です。
 遺言書がなければ、相続人は遺産分割協議によって財産(借金も含めて)を分割することになりますが、協議の過程では相続人の家族や第三者など、さまざまな利害関係者の意見も入ってくる結果、単純に法定相続分通りの分割では納得しない相続人が出てくることが非常に多くあります。その結果、相続人の過去の暴き合いや、財産の持ち逃げといった事態にまで発展することもあります。
 遺言書があれば、③のように、遺産分割協議をしなくても済む結果、このような相続トラブルの大半を回避することが可能となります。
 一方、遺言書を書くことに特段のデメリットはありません。
 もっとも、不適切な方式や状況の下で書かれた場合には遺言書は無効となることもあります。
 また、内容いかんでは、単純に法定相続分で相続させるよりも相続人の相続税の負担が重くなるような場合もあります。
 これらについては別の項目でお話ししたいと思います。

この記事を書いた人

日下 貴弘

略歴
東京都出身。
早稲田実業高等部(商業科)卒業、早稲田大学法学部卒業、中央大学法学部法務研究科修了。
大学卒業後、大手都市銀行に就職。その後、都内弁護士事務所勤務を経て、 2020年、グリーンクローバー法律会計事務所を設立。
同事務所代表弁護士・代表税理士。
東京弁護士会所属(税務特別委員会、高齢者・障害者の権利に関する特別委員会)。
東京税理士会本郷支部所属。
日本税務会計学会法律部門学会員。