被相続人が死亡した際に、同居していた配偶者がその建物に引き続き居住することで生活の安定を図ることができるように、平成30年の民法改正で、配偶者居住権と配偶者短期居住権という制度が新設されました。
このうち、配偶者短期居住権は、残された配偶者が、遺産分割協議が終わるまで、無償で引き続き居住することができるというものです。
これまで、民法にはこのような制度がなく、残された配偶者に対し、建物の所有権を取得した者が立ち退きを迫るケースが多く見られました。
これに対して、従来は、被相続人とその配偶者との関係で、生前、無償で居住することについて合意があったと推認し、その関係が相続人に引き継がれるという判例の考え方によって、その配偶者を保護してきました。
しかし、この考え方によると、被相続人がその建物を第三者に遺贈した場合や、相続人がその建物を第三者に譲渡した場合には、残された配偶者は居住権をその第三者に主張できないため、保護が十分でないという批判がありました。
そこで民法は、配偶者居住権と配偶者短期居住権という制度を新設して、このような場合であっても、残された配偶者は、その建物に引き続き居住することができるようにしたのです。
配偶者短期居住権は、配偶者を含めた共同相続人間で遺産分割協議をすべき場合には、遺産分割協議により建物の帰属が明らかになる日か、相続開始から6か月を経過する日の、いずれか遅い日まで認められます。また、その他の場合には、建物の所有権を取得した人が、配偶者に居住権消滅の申入れをした日から6か月を経過する日まで認められます。
なお、配偶者が配偶者居住権を取得した場合には、配偶者短期居住権は消滅します(配偶者居住権につきこちら)。