遺言書をせっかく作成しても、それが無効となってしまう場合があるので、注意が必要です。
遺言書が無効となる場合としては、大きく、遺言能力がない場合と、遺言書の方式に違背していた場合とがあります。
民法は、15歳に達した者は遺言することができると定めていますが、一方で、「遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない」と定め、遺言書の作成についての判断能力があることを要求しています。これを遺言能力といいます。
詳しくは別の項目でお話ししたいと思います。
また民法は、遺言書の方式について細かい定めを置いており、これに違背した遺言書は無効となります。
遺言書の方式違背としては、第1に、公正証書遺言書でも秘密証書遺言書でもない遺言書(したがって自筆証書遺言書として取り扱われます)であるにもかかわらず、自筆で作成しなかった場合や、自筆証書遺言書や秘密証書遺言書に日付の記入や署名、捺印を忘れた場合があります。
第2に、2人以上の人が遺言書に記載をした場合です。これを共同遺言といいますが、遺言者の意思があいまいになるため、民法はこのような遺言書を無効としています。
第3に、遺言書の訂正方法は民法に定められており、単純に訂正箇所を抹消して訂正印を捺し、正しい字句を書き加えるだけでは足りないとされています。しかし、意外と知られていないのか、間違った訂正方法の遺言書をよく見かけます。
なお、別の項目でお話しする自筆証書遺言書の法務局保管の制度により、自筆証書遺言書については、方式の確認をしてもらうことができるようになりましたが、内容にかかわる部分について確認されるわけではなく、十分に理解して記載しなければ遺産分割の際の争いの可能性はあります。