遺言書の記載内容が無効とまではいえませんが、不適切であるために、遺言書をせっかく作成しても、相続争いを回避できないケースがあります。
方式違背はないが、内容が不明確、不十分である場合です。
まず第1に、相続財産に記載漏れがあったり、逆に相続開始時には存在していなかったりする場合です。
前者の代表的なものとしては、マンションの共有部分にも持分を有していた場合や、私道を所有していた場合です。公図や不動産登記簿などによって、調査を尽くす必要があります。
また、公図や不動産登記簿などによっても見つけられない、未登記の建物を所有している場合も意外とあります。必要に応じて、現地調査もすることになります。
これらの調査を尽くして遺言書を作成しても、漏れてしまう相続財産があることもあります。
そのため、念を入れて、万が一遺言に記載していない財産があった場合に、それをだれに相続させるのかについても記載しておかなければ、結局は、相続人の間で遺産分割協議をしなければならなくなります。
包括的な条項も必ず入れておく必要があります。
後者の代表的なものとしては、預貯金や保険の払戻や解約などがあります。したがって、後日、払戻や解約を予定している預貯金や保険については、その可能性も考慮して遺言書の内容を考えると共に、払戻や解約があったとしても、遺言書が無効とならないように、これらの預貯金や保険が存在することを条件とした条項を作成したりしないように注意が必要です。