贈与税の特例の1つに「贈与税の配偶者控除」があります。
 これは、婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産、またはその購入のための金銭の贈与をした場合、2000万円までの配偶者控除が受けられるという制度で、俗に「おしどり贈与」と呼ばれています(相続税法21条の6)。
 暦年贈与の基礎控除が110万円ですので、あわせて2110万円までの控除が受けられることになります。
 別の項目でお話しする通り、平成30年の民法改正により婚姻期間が20年以上の夫婦間でされた居住用不動産の贈与等について持ち戻し免除の推定規定を置いたこととの対応から相続税法も改正し、配偶者保護のために新設された制度です。
 なお、この特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年の3月15日までに、贈与を受けた居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、現実に住んでおり、かつ、その後も引き続き住む見込みであることが必要です。
 また、この特例の適用を受けるためには、贈与税が発生するかどうかにかかわらず、贈与税の申告書を提出することが必要です。
 なお、贈与した不動産によっては贈与税以外の他の税金も発生します。これについては別の項目でお話ししたいと思います。
 「おしどり贈与」は民法と相続税法にまたがる制度であり、両制度の理解が必要です。
 利用に不安がある場合には、相続税に強い弁護士に相談することをお勧めします。

この記事を書いた人

日下 貴弘

略歴
東京都出身。
早稲田実業高等部(商業科)卒業、早稲田大学法学部卒業、中央大学法学部法務研究科修了。
大学卒業後、大手都市銀行に就職。その後、都内弁護士事務所勤務を経て、 2020年、グリーンクローバー法律会計事務所を設立。
同事務所代表弁護士・代表税理士。
東京弁護士会所属(税務特別委員会、高齢者・障害者の権利に関する特別委員会)。
東京税理士会本郷支部所属。
日本税務会計学会法律部門学会員。