別の項目でお話しした通り、相続税対策(納税資金対策)として、生命保険を利用して、納税資金を準備する方法があります。
 また、生命保険金には、非課税枠による相続税額の軽減効果や、口座凍結リスクの回避、受取人固有の財産になることによる紛争リスクの回避のほか、原則として特別受益としての持ち戻しの対象とはならない、といったメリットもあります。
 もっとも、生命保険金が極めて高額であって、生命保険金を特別受益とせずに遺産分割を行うと、生命保険を受け取った相続人と他の相続人との間に著しい不公平が生じるような特別の場合は、生命保険金を特別受益に準じて持ち戻しの対象とするとするのが、最高裁判所の判例です。
 たとえば、特定の相続人が受け取った生命保険金が、相続開始時の相続財産の総額と同額になるような場合には、他に特段の事情がない限り、上の「特別の場合」にあたるといえるでしょう。
 安易に多額の生命保険金契約をすることには慎重であるべきです。
 不安がある場合には、相続税に強い弁護士や税理士に相談することをお勧めします。

この記事を書いた人

日下 貴弘

略歴
東京都出身。
早稲田実業高等部(商業科)卒業、早稲田大学法学部卒業、中央大学法学部法務研究科修了。
大学卒業後、大手都市銀行に就職。その後、都内弁護士事務所勤務を経て、 2020年、グリーンクローバー法律会計事務所を設立。
同事務所代表弁護士・代表税理士。
東京弁護士会所属(税務特別委員会、高齢者・障害者の権利に関する特別委員会)。
東京税理士会本郷支部所属。
日本税務会計学会法律部門学会員。