遺留分の侵害に気づかず、または侵害があることを承知した上で遺産分割協議を成立させた後に、遺留分侵害額請求をして、遺留分を取り戻すことはできるでしょうか。
結論からいえば、遺留分侵害額請求により取り戻しをすることはできませんが、その他の方法により取り戻しをすることができる場合があります。
遺産分割協議の成立後に遺留分侵害額請求ができない理由には、遺留分制度と遺産分割制度との目的が異なることに関連します。
まず、遺留分制度の目的は、別の項目でお話しした通り、兄弟姉妹以外の法定相続人について、遺言書による一方的な指定から相続人としての権利を守り、その生活を保障することにあります。
一方、遺産分割協議は、各相続人による自由な遺産の処分の決定という自由な意思の尊重をその目的とします。
遺産分割協議が成立した以上、遺産について自由な意思決定をしたとされるわけですから、たとえその結果が遺留分を侵害していたとしても、それはその相続人がその結果を認めたとみなされるということです。
これは、遺留分の侵害があることを承知した場合だけでなく、遺留分の侵害に気づかなかった場合も同様です。
遺留分がいくらであるかにかかわらず、遺産分割協議における結果に合意している以上、それを超えた相続分を取得する意思はなかったといえるからです。
では、遺産分割協議後に遺留分を取り戻すことができる方法とは何でしょうか。
成立した遺産分割協議の効力を何らかの形で否定することができればよいということになります。
もっとも、これが必ずできるというわけではありません。
これについては少し長くなりますのでまた別の項目でお話しします。