自筆証書遺言については、今までは、書かれたかどうかを確認することはできず、また、遺言書自体を探し出すまで、その内容を確認することもできませんでした。
 さらには、自筆証書遺言書を管理していた人や発見した人が、遺言書を執行するまでの間にその内容を書き換えてしまうということも少なからずありました。
 そこで、法務局において自筆証書遺言を保管する制度が新設され、自筆証書遺言書を作成した遺言者が、遺言書を法務局に保管すれば、遺言者の死亡時に遺言者が指定した人(相続人でなくてもかまいません)に対し、自筆証書遺言書が法務局に保管されていることを知らせることができることになりました。また、相続人は相続開始後、法務局に対して遺言書の有無を照会したり、遺言書を閲覧したりすることができるようになりました。
 また、この制度を利用した場合、遺言書の検認が不要というメリットもあります。
 この制度を利用するには、あらかじめ自筆証書遺言書を作成した上で、法務局に予約を入れ、予約日当日に遺言者本人が法務局に行く必要があります。
 予約は、直接法務局の窓口で行うほか、電話やインターネット上で行うことができます。
 遺言書を保管してくれる法務局には指定があり、どの法務局でもいいというわけではありません。具体的には、①遺言者の住所を管轄する法務局、②遺言者の本籍地を管轄する法務局、③遺言者が所有している不動産の所在地を管轄する法務局、であれば、保管してくれます。
 保管の申請にあたっては申請書や必要書類なども必要となりますので、詳しくは予約の際に確認しておくと良いでしょう。
 法務局では申請の際、遺言書の形式(全文、日付、氏名が自署されているか、押印があるかなど)については確認してくれますが、内容については確認してくれません。また、どのような遺言書を書いたら相続トラブルにならないか、どのような遺言書を書いたら相続税対策になるかといった相談にもいっさい応じてくれません。
 せっかくの遺言が無効になってしまうのは避けたいものです。
 自筆証書遺言書の内容について不安であれば相続に強い弁護士に相談することをお勧めします。

この記事を書いた人

日下 貴弘

略歴
東京都出身。
早稲田実業高等部(商業科)卒業、早稲田大学法学部卒業、中央大学法学部法務研究科修了。
大学卒業後、大手都市銀行に就職。その後、都内弁護士事務所勤務を経て、 2020年、グリーンクローバー法律会計事務所を設立。
代表弁護士・代表税理士。
東京弁護士会所属(税務特別委員会、高齢者・障害者の権利に関する特別委員会)。
東京税理士会本郷支部所属。
日本税務会計学会法律部門学会員。