相続財産というと、不動産や預貯金といったプラスの財産を想像するのか一般的かと思います。
 しかし相続財産には、被相続人が負う借金の返済義務や保証人としての義務など、マイナスの財産も含まれます。
 単純に相続した結果、マイナスの財産の額がプラスの財産の額を上回っていた場合には、相続によって自分自身が経済的に追い詰められることも考えられることです。
 そこで民法は、相続に際して①単純承認、②限定承認、③相続放棄という3つの選択肢を設けています。
 まず、①の単純承認とは、被相続人の相続財産をプラス、マイナスともに相続する方法です。
 次に、③の相続放棄とは、①の単純承認とは逆に被相続人の相続財産をプラス、マイナスともに相続しない方法です。マイナスの財産の額がプラスの財産の額を上回っていた場合には、相続放棄か、次の限定承認を検討すべきです。
 ②の限定承認とは、少し難しいのですが、マイナスの財産をプラスの財産の範囲に限定して相続する方法です。マイナスの財産の額がプラスの財産の額を上回っていた場合には、プラスの財産の額の限度でマイナスの財産の返済義務を負う結果、相続によって経済的不利益を受けることはなくなります。一方で、プラスの財産の額がマイナスの財産の額を上回っていた場合には、マイナスの財産を全額返済することによりますが、プラスの財産の額との差額を相続できる結果、やはり相続によって経済的不利益を受けることはなくなります。
 なお、②の限定承認をするためには手続きには相続人全員の同意が必要です。この手続きについては複雑であるため、弁護士に相談することをお勧めします。

この記事を書いた人

日下 貴弘

略歴
東京都出身。
早稲田実業高等部(商業科)卒業、早稲田大学法学部卒業、中央大学法学部法務研究科修了。
大学卒業後、大手都市銀行に就職。その後、都内弁護士事務所勤務を経て、 2020年、グリーンクローバー法律会計事務所を設立。
代表弁護士・代表税理士。
東京弁護士会所属(税務特別委員会、高齢者・障害者の権利に関する特別委員会)。
東京税理士会本郷支部所属。
日本税務会計学会法律部門学会員。