遺産の中に不動産がある場合、その取り扱いを巡って紛争となるケースは少なくありません。
 評価方法の点でも、分割方法の点でも、全員が納得する結論はなかなかないのが実情です。
 評価方法に関しては、①時価を基準とする方法、②相続税評価額を基準とする方法、③固定資産税評価額を基準とする方法、などがあり、相続人全員の合意があればいずれでも構いませんが、争いがあれば①によるのが一般です。
 また、①についても、収益物件かどうかで計算方法を分ける場合もあり、同じ計算方法であっても、計算の際に考慮する要素や数値によって不動産の評価額が異なることは珍しくありません。
 次に分割方法については、別の項目でお話しした通り、①現物分割、②代償分割、③換価分割という3つの方法があります。
 不動産に即して考えると、①は不動産を共有という形で相続する方法や複数の不動産をそれぞれが相続する方法、②は不動産を相続人の一部が相続し、他の相続人はその分を現金で支払ってもらう方法、③は不動産を第三者に売却し、その代金を相続人で分ける方法、ということになります。
 いずれが良いのかは各相続人の事情や不動産の内容にもより、一概には言えません。
 特に不動産については相続人の一部が居住している場合や、第三者に賃貸して賃料収入を得ている場合など、利害関係が複雑化しやすいため、その点も考慮して各相続人が納得のいく結論を導かなければならず、また、往々にして所得税などの税金についても配慮が必要です。
 不安があれば弁護士や税理士の助力を受けるのが望ましいでしょう。

この記事を書いた人

日下 貴弘

略歴
東京都出身。
早稲田実業高等部(商業科)卒業、早稲田大学法学部卒業、中央大学法学部法務研究科修了。
大学卒業後、大手都市銀行に就職。その後、都内弁護士事務所勤務を経て、 2020年、グリーンクローバー法律会計事務所を設立。
代表弁護士・代表税理士。
東京弁護士会所属(税務特別委員会、高齢者・障害者の権利に関する特別委員会)。
東京税理士会本郷支部所属。
日本税務会計学会法律部門学会員。