(1) 2024年1月から施行される税制改正のうち、生前贈与に関していくつか大きな改正がありました。
(2) その1つは、暦年贈与における持ち戻し期間の延長です。
別の項目でお話しした通り、生前贈与には大きく、暦年贈与と相続時精算課税制度を利用した贈与の2つがあります。
そのうち、暦年贈与については、これまで、被相続人の死亡前3年間に生前贈与された財産は相続税の計算の際に遺産に含めて計算される(持ち戻し)ことになっていました。
これは、相続税を逃れるための駆け込み贈与を防止することを目的としています。
今回の改正で、この3年の期間が7年に延長されることになりました。
ただし、注意点が2点あります。
(3) 第1点は、2024年1月から急に7年に延長されるのではなく、経過措置を設け、4年間かけて段階的に延長していくという点です。
すなわち、経過措置の期間中は、生前贈与の持ち戻し期間の起算点は2024年1月となり、それ以前にさかのぼることはないという点です。
具体的に見てみましょう。
まず、2023年12月までの贈与については持ち戻し期間は3年ですので、被相続人が2025年6月に亡くなった場合、その持ち戻し期間は2022年6月以降のものに限られることになります。
したがってこの場合、死亡前3年より前の2022年4月にした贈与は持ち戻しの対象とならないことになります。
ここは改正後も変わりません。
次に、2024年1月以降の贈与については最長で死亡前7年までの贈与が持ち戻されることになります。
そこで、被相続人が2027年6月に亡くなった場合、その持ち戻し期間は2024年6月からではなく、2024年1月からとなります。
したがってこの場合、死亡前3年より前の2024年4月にした贈与も持ち戻しの対象となることになります。
もっとも、起算点は2024年1月からですので、死亡前7年以内の贈与であっても、2023年4月にした贈与は持ち戻しの対象とならないことになります。
(4) 注意点の第2点は、持ち戻し金額は全額ではないという点です。
具体的には、死亡前3年前までの贈与については全額を持ち戻しますが、それ以前(4年前から7年前まで)までの贈与については合計で100万円を控除した額を持ち戻すこととしています。
過去の贈与について記録が十分残っていない可能性に配慮したものとされています。
(5) 以上は、生前贈与の中でももっともよく使われている暦年贈与についての大きな改正であり、影響は大きいものと思われます。
しっかり内容を理解しておくことが必要です。
(6) なお、もう1つの生前贈与である相続時精算課税制度を利用した贈与についても大きな改正がありました。
詳しくは別の項目でお話ししたいと思います。