別の項目でお話しした通り、生前贈与には大きく、暦年贈与と相続時精算課税制度を利用した贈与の2つがあります。
 贈与者から見た場合、この2つの制度は選択的で、いずれかしか適用することができません。
 また、相続時精算課税制度を選択した場合、その後暦年贈与を選択することはできません。
 令和5年度税制改正によって相続時精算課税制度にも1年ごとに110万円までの基礎控除額が設定されました。
 この110万円までは受贈者単位で考えますので、たとえば子Cが父Aと母Bからそれぞれ暦年贈与で100万円の贈与を受けた場合、基礎控除額は220万円となり贈与税がかからないのではなく、基礎控除額はやはり110万円であってこれを超えた90万円については贈与税がかかるということになります。
 贈与者は暦年贈与か相続時精算課税制度かいずれかしか選択することができず、併用をすることはできません。しかし、受贈者は、暦年贈与を選択した贈与者と相続時精算課税制度を選択した贈与者の両方から贈与を受けることは可能です。
 たとえば、子Cが父Aから暦年贈与で、母Bから相続時精算課税制度を利用した贈与で、それぞれ100万円の贈与を受けた場合には、基礎控除額は各制度の110万円の合計である220万円(相続時精算課税制度の特別控除額2500万円を除く)となり、贈与税はかからないことになります。
 また、別の項目でお話しした通り、贈与税にはさまざまな非課税特例制度があります(住宅取得等資金の贈与の非課税につきこちら、教育資金の一括贈与の非課税につきこちら、結婚・子育て資金贈与の一括贈与の非課税につきこちら)。
 これらの制度を組み合わせることで、有効な相続税対策が可能です。
 具体的な適用結果については税理士に相談されることをお勧めします。

この記事を書いた人

日下 貴弘

略歴
東京都出身。
早稲田実業高等部(商業科)卒業、早稲田大学法学部卒業、中央大学法学部法務研究科修了。
大学卒業後、大手都市銀行に就職。その後、都内弁護士事務所勤務を経て、 2020年、グリーンクローバー法律会計事務所を設立。
代表弁護士・代表税理士。
東京弁護士会所属(税務特別委員会、高齢者・障害者の権利に関する特別委員会)。
東京税理士会本郷支部所属。
日本税務会計学会法律部門学会員。