遺言書の記載内容が無効とまではいえませんが、不適切であるために、遺言書をせっかく作成しても、相続争いを回避できないケースがあります。
 方式違背はないが、内容が不明確、不十分である場合です。
 まず第1に、相続財産に記載漏れがあったり、逆に相続開始時には存在していなかったりする場合です。
 前者の代表的なものとしては、マンションの共有部分にも持分を有していた場合や、私道を所有していた場合です。公図や不動産登記簿などによって、調査を尽くす必要があります。
 また、公図や不動産登記簿などによっても見つけられない、未登記の建物を所有している場合も意外とあります。必要に応じて、現地調査もすることになります。
 これらの調査を尽くして遺言書を作成しても、漏れてしまう相続財産があることもあります。
 そのため、念を入れて、万が一遺言に記載していない財産があった場合に、それをだれに相続させるのかについても記載しておかなければ、結局は、相続人の間で遺産分割協議をしなければならなくなります。
 包括的な条項も必ず入れておく必要があります。
 後者の代表的なものとしては、預貯金や保険の払戻や解約などがあります。したがって、後日、払戻や解約を予定している預貯金や保険については、その可能性も考慮して遺言書の内容を考えると共に、払戻や解約があったとしても、遺言書が無効とならないように、これらの預貯金や保険が存在することを条件とした条項を作成したりしないように注意が必要です。

この記事を書いた人

日下 貴弘

略歴
東京都出身。
早稲田実業高等部(商業科)卒業、早稲田大学法学部卒業、中央大学法学部法務研究科修了。
大学卒業後、大手都市銀行に就職。その後、都内弁護士事務所勤務を経て、2020年、グリーンクローバー法律会計事務所を設立。
同事務所代表弁護士・代表税理士。
東京弁護士会所属(税務特別委員会、高齢者・障害者の権利に関する特別委員会)。
東京税理士会本郷支部所属。
日本税務会計学会法律部門学会員。