「相続させる」という文言と「遺贈する」という文言とは、いずれも遺言者の意思によって相続財産を渡すという点では同様ですが、法律上の取扱いは異なります。
 まず、「遺贈する」という文言は一般に相続人以外に対して財産を渡したい場合に用いられますが、相続人に対して財産を渡したい場合にも用いることができます。一方、「相続させる」という文言は、相続人に対して財産を渡したい場合にしか用いることはできません。
 次に、不動産を渡したい場合、「相続させる」という文言であれば、相続を登記原因とする「相続登記」を行うことになりますが、「遺贈する」という文言であれば、遺贈を登記原因とする「遺贈登記」を行うことになります。そして、遺贈登記を行う場合には、遺贈によって不動産を受け取る人が相続人であっても、相続人全員の印鑑登録証明書が必要になります。一方、相続登記を行う場合には、遺贈によって不動産を受け取るその相続人の印鑑登録証明書があれば足りることになります。
 なお、別の項目でお話しする不動産の登録免許税については、遺贈登記の場合には贈与の場合と同じように固定資産税評価額の2%となるのが原則ですが、遺贈によって不動産を受け取る人が相続人である場合には、例外的に相続登記と同様の0.4パーセントに軽減されます。

この記事を書いた人

日下 貴弘

略歴
東京都出身。
早稲田実業高等部(商業科)卒業、早稲田大学法学部卒業、中央大学法学部法務研究科修了。
大学卒業後、大手都市銀行に就職。その後、都内弁護士事務所勤務を経て、2020年、グリーンクローバー法律会計事務所を設立。
同事務所代表弁護士・代表税理士。
東京弁護士会所属(税務特別委員会、高齢者・障害者の権利に関する特別委員会)。
東京税理士会本郷支部所属。
日本税務会計学会法律部門学会員。