遺言書によって不動産を共有で相続させたい場合があります。
 自分の死後、自宅不動産に配偶者と子どもが仲良く居住することを期待したり、また、別の項目でお話しする通り、相続税対策として小規模宅地等の特例の適用を考えたりする場合に、この方法が用いられることがあります。
 不動産を共有で相続させたい場合には、相続後の共有持分の割合を記載しておかなければなりません。
 この記載がなくても遺言書自体が無効となるわけではありませんが、相続登記をする際には共有持分についても登記されるため、遅くとも登記申請までには共有持分の割合を決めておく必要があります。また、相続人全員の実印が押された遺産分割協議書と全員分の印鑑登録証明書も必要になります。
 なお、共有されている不動産については、不動産自体を売却する際には全員の同意が必要となります。共有している人が自分の共有持分のみを売却することは他の共有者の同意なく可能ですが、相続人で共有していた場合には、突然他人と同居するという事態になることもありえます。
 遺言書で不動産を共有させる場合には、その後のこともよく考えておく必要があります。

この記事を書いた人

日下 貴弘

略歴
東京都出身。
早稲田実業高等部(商業科)卒業、早稲田大学法学部卒業、中央大学法学部法務研究科修了。
大学卒業後、大手都市銀行に就職。その後、都内弁護士事務所勤務を経て、 2020年、グリーンクローバー法律会計事務所を設立。
同事務所代表弁護士・代表税理士。
東京弁護士会所属(税務特別委員会、高齢者・障害者の権利に関する特別委員会)。
東京税理士会本郷支部所属。
日本税務会計学会法律部門学会員。