別の項目でお話しした通り、相続税対策(相続評価額対策)として、生前贈与を利用して相続税計算の基礎となる財産の評価額を下げて、相続税額自体を減らす方法があります。
 この点、不動産の贈与については、注意が必要です。
 金銭であれ不動産であれ、暦年贈与の基礎控除額が110万円であることに変わりはありません。これを超えた部分の税率にも違いはありません。
 また、婚姻期間20年を超えた配偶者間の居住用不動産の贈与や直系尊属から直系卑属への住宅取得等資金の贈与において、これとは別に控除額があることも、別の項目(配偶者間の居住用不動産の贈与につきこちら、直系尊属からの住宅取得等資金の贈与につきこちら)でお話しした通りです。
 ただし、不動産を贈与する場合には、登録免許税や不動産取得税という、別の税目が問題となります。
 不動産の名義変更の際にかかる登録免許税は、相続の場合には不動産評価額の0.4%ですが、生前贈与の場合には不動産評価額の2%であり、生前贈与の方が5倍も高くなります。
 また、不動産取得税は、相続の場合にはそもそもかかりませんが、生前贈与の場合には不動産評価額の3%がかかります。
 したがって、不動産を生前贈与する場合には、これらの税金のことも考慮に入れて、メリットがあるかを考える必要があります。
 なお、平成28年以降の贈与においては、贈与税の配偶者控除を受ける際には必ずしも登記事項証明書は必要ではなく、配偶者が居住用不動産を取得したことを証する書類でもよいとされていることから、名義変更の登記をするかどうかは具体的状況に応じて検討するのが良いでしょう。
 土地・建物のいずれを贈与するのが有利かは、場合によります。
 これについては、別の項目でお話しします。

この記事を書いた人

日下 貴弘

略歴
東京都出身。
早稲田実業高等部(商業科)卒業、早稲田大学法学部卒業、中央大学法学部法務研究科修了。
大学卒業後、大手都市銀行に就職。その後、都内弁護士事務所勤務を経て、 2020年、グリーンクローバー法律会計事務所を設立。
代表弁護士・代表税理士。
東京弁護士会所属(税務特別委員会、高齢者・障害者の権利に関する特別委員会)。
東京税理士会本郷支部所属。
日本税務会計学会法律部門学会員。